相続で取得した土地の国庫帰属が可能に

相続で取得した土地の国庫帰属が可能に

土地の名義人が亡くなったが、その名義変更の登記がされないことにより、所有者不明土地が増大し、社会問題となってしまっているのは以前も記事にさせて頂きました。
その原因の1つとして、相続しても使わない、管理や固定資産税の支払いなどの負担だけが残るため、相続手続きをとらないということが挙げられていました。
その問題点を解決するため、相続で取得した土地について一定の要件を満たせば国庫に帰属させることが可能とする法律が制定されました。
以下にポイントをまとめてみます。

どんな制度?

相続や遺贈によって土地所有権を取得した相続人が、法務大臣(窓口は法務局)の承認により、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする制度です。

誰が承認申請できる?

相続、遺贈により土地の所有権を取得した相続人が承認申請出来ます。
売買、贈与等で取得した人は承認申請することはできません。
また、土地が共有地の場合は、共有者全員で承認申請をしなければなりません。

どんな土地でも引き取ってもらえる?

いくつかの条件があります。
引き取ってもらえない土地の例としては以下のようなものです。

  • 建物や工作物、車両等がある土地
  • 土壌汚染や埋設物がある土地
  • 崖地
  • 境界が不明である土地
  • 担保権などの権利が設定されている土地
  • 道路など、他人による使用が予定されている土地
  • 管理、処分をするにあたって、過大な費用がかかる土地

手続きにお金はかかる?

誤解をされがちですが、この制度は無償で国が土地を引き取ってくれるものではありません。

承認申請をする際に審査手数料がかかる他、承認を受けた後に10年分の土地管理費相当額の負担金を納付する必要があります。
具体的な金額や算定方法は今後決められる予定です。

2023年3月2日追記

相続等により取得した土地の国への帰属制度について、より具体的な負担金の計算方法が公開されました。
→ 相続土地国庫帰属制度の運用について

いつから制度利用できる?

令和5年4月27日が法施行日とされています。

考察

結局のところ、この制度は有用なものでしょうか?

国が土地を引き取ってくれるためには、前述のとおりいくつかのハードルがあります。

特にひっかかりそうなハードルは、建物があれば壊してからでないと引き取ってもらえない、土地の境界が不明であれば引き取ってもらえない、ということではないでしょうか。

また、10年分の土地管理費相当額の負担金を支払う必要があることもネックです。
負担金がいくらほどになるのかは今後決められる予定ですが、参考までに、現状国有地の10年分の管理費用として、簡単な管理で足りる原野なら約20万円、市街地の宅地(200㎡)なら約80万円とされています。

上記のようなハードル、ネックはあるものの、使用せず売却も難しいような土地について、将来の維持、管理から解放されるということで、有用なのではないかと思います。
条件を満たせば、農地、山林も対象となります。

土地だけ相続放棄したいとお考えの方にも

家庭裁判所で相続放棄を行えば、不要な不動産を相続しないことも可能ですが、相続放棄を行うと預金等も一切相続出来なくなりますし、管理責任は残る場合もあります。
一部の土地だけ手放したい、という場合にも有効となる制度だと思います。

戻る予定のない実家の土地を相続された方など、覚えておいてもよい制度ではないでしょうか。

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(抜粋)

第一条 この法律は、社会経済情勢の変化に伴い所有者不明土地(相当な努力を払ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない土地をいう。)が増加していることに鑑み、相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)(以下「相続等」という。)により土地の所有権又は共有持分を取得した者等がその土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度を創設し、もって所有者不明土地の発生の抑制を図ることを目的とする。

第二条 土地の所有者(相続等によりその土地の所有権の全部又は一部を取得した者に限る。)は、法務大臣に対し、その土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認を申請することができる。

3 承認申請は、その土地が次の各号のいずれかに該当するものであるときは、することができない。

一 建物の存する土地

二 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地

三 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地

四 土壌汚染対策法(平成十四年法律第五十三号)第二条第一項に規定する特定有害物質(法務省令で定める基準を超えるものに限る。)により汚染されている土地

五 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

第五条 法務大臣は、承認申請に係る土地が次の各号のいずれにも該当しないと認めるときは、その土地の所有権の国庫への帰属についての承認をしなければならない。

一 崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの

二 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地

三 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地

四 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの

五 前各号に掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの

第十条 承認申請者は、第五条第一項の承認があったときは、同項の承認に係る土地につき、国有地の種目ごとにその管理に要する十年分の標準的な費用の額を考慮して政令で定めるところにより算定した額の金銭(以下「負担金」という。)を納付しなければならない。

2 法務大臣は、第五条第一項の承認をしたときは、前条の規定による承認の通知の際、法務省令で定めるところにより、併せて負担金の額を通知しなければならない。

3 承認申請者が前項に規定する負担金の額の通知を受けた日から三十日以内に、法務省令で定める手続に従い、負担金を納付しないときは、第五条第一項の承認は、その効力を失う。

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