成年後見制度について①

成年後見制度について①

私たち司法書士の仕事の中で、1つの柱になるものとして、成年後見に関連する業務があります。
今回から何回に分けて、成年後見制度についてまとめてみたいと思います。
成年後見制度には、大きく分けてすでに判断能力が低下してしまった方を保護する「法定後見制度」と、まだ判断能力が十分にあるうちに将来に備えて契約をしておく「任意後見制度」の2種類がありますが、まずは「法定後見」をとりあげてみたいと思います。

成年後見制度って何?

成年後見制度とは、認知症や精神疾患等によって判断能力が低下した方について、財産管理や身上監護を代理したりサポートしたりする人を選任することによって、判断能力が低下してしまったご本人の財産や権利、生活を守る制度です。
成年後見制度の根底には、高齢者や障害をもつ人が社会の中で他の人と平等に生きていくというノーマライゼーションの理念と、残存能力を活用して本人自身の意思を尊重し、意思決定を支援していくという理念があります。
大前提として、成年後見制度は判断能力が低下した本人のために作られた制度であるということです。
平成12年から始まった制度で、運用開始から20年程が経ちました。

成年後見制度はどんな時に利用するべき?

まず考えられるのは、例えば認知症の高齢者の方が一人暮らしをしており、悪徳な訪問販売の被害を受けてしまっているような場合が考えられます。
後見人には本人の行った契約を取り消すことができる取消権があるので、仮に悪徳商法の被害にあってしまっても本人の財産を守ることができます。

また、親の施設費を支払うために親名義の定期預金を解約したり、不動産を売却しようとしたりした際に、後見人を選任しなければ手続きが出来ないと言われることがあります。
預金の解約や不動産売却は法律行為となりますが、意思能力が十分でないとその行為は無効とされるため、本人に代わって手続きを行う人を選ぶわけです。

成年後見制度を利用するためには?

家庭裁判所に、戸籍謄本や診断書などの添付書類を添えて申立書を提出する必要があります。
提出先の家庭裁判所は、判断能力が低下した本人の住所地(通常は住民登録をしている場所ですが、長期入院をしていたり、施設に入所したりしている場合にはその病院や施設所在地などの居所)を管轄する家庭裁判所です。
申立書が提出されると、裁判所で調査を行います。
その過程で調査官が本人や申立人に面会や電話をかけるなどして本人の状態や周辺事情を行い、申立内容が精査されることになります。
場合によっては、本人の判断能力の程度につき医師による調査(鑑定)が実施されることもあります。

誰が申立てをすることができる?

家庭裁判所に後見等開始の申立てをすることができるのは、本人、配偶者、4親等内の親族とされています。
本人に身よりがない場合や、親族が関わりを拒否している場合で、本人も申立てが困難なほど判断能力が低下してしまっている際は、市区町村長が申立てをすることもできます。

法定後見制度の類型

本人の判断能力の程度によって、「後見」「保佐」「補助」に分かれます。
判断能力が全くない場合は「後見」、判断能力が著しく不十分な場合には「保佐」、判断能力が十分でない場合は「補助」に類型されます。
それぞれ本人を支援する人のことを「後見人」「保佐人」「補助人」と呼びますが、類型に応じて本人が行う法律行為に関する代理権、同意権、取消権の範囲に違いがあります。
例えば、後見人は原則としてすべての法律行為について代理権を持ちますが、補助人は本人が望む一定の事項についてのみ同意権や取消権、代理権を持つことになります。
具体的にどのように類型が決定されるかというと、申立書の内容と添付された診断書の内容、場合によっては鑑定の結果を踏まえて家庭裁判所が決定することになります。

類型本人の判断能力の程度本人を支援する人の名称
後見判断能力が全くない場合後見人
保佐判断能力が著しく不十分な場合保佐人
補助判断能力が十分でない場合補助人
法定後見制度の類型

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